離婚日記~夫婦を続けるためには

50代女子。離婚を決めました。どんなふうになっていくのかわからないから・・その道のりを綴ってみようと思います。

開戦日

終戦記念日だった。

娘は部活、息子は昼過ぎからバイト。

俺様は地元の同級生とゴルフ。

そう、俺様の趣味はゴルフとテレビ。

ゴルフは月に3~4回のペースで行く。

テレビはほぼ見っ放し。

リアル放送から録画もの、スカパーのゴルフ番組。

仕事から帰ればソファーの指定席にきっちりと座る。

ソファーの肘掛には、テレビとブルーレイレコーダーのリモコンがきれいにふたつ並んで常時置いてある。

そこに自分のスマホをもうひとつ並べて、座ると同時にテレビのリモコンのスイッチを入れる。

食事とトイレ、お風呂以外はそこを1ミリも動かない。

じ~っと黙って画面を見つめている。

土日も何も用のない日は、ほぼ1日そうしている。

この人は何者なのか。

 

私はと言えば、不幸にもそれが見える位置で食事の仕度をしている。

食器を洗いながら、それが見えてしまうことに息苦しさを覚える。

ダイニングにあるパソコンに向かっている時は、お互いに背中合わせで5メートルほどの距離があり、私は最近ヘッドホンをしているので、俺様の空気をあまり感じることなく過ごせている。

同じ空間にいるのは辛いが、もうそれは慣れてきて、休日にふたりきりになる時間もなんとかしのぐことができるようになった。

 

そして終戦記念日

誰もいない時間を優雅に過ごしていた。

息子は夜12時くらいまでバイト、俺様もゴルフの後どこかで飲んで食べて、もしかしたら麻雀かもということ。

なので私は、夜9時くらいに帰宅する娘と、駅まで迎えに行くついでに遅い夕ご飯を食べようと打ち合わせをしていた。

ところが。

のんびりとキッチンで食器を洗っていたところ、なんと俺様が帰ってきた。

夜の7時くらいだった。

ウソでしょ!なんでこんな早く?

私の時間がなくなった・・

俺様は上機嫌で梨を1箱抱えてきた。

「T男がお前に会いたいってさ~行ってやってくれよ~」

ほとんど飲まない酒を飲んだようで、少し顔が赤い。

朝ゴルフに行くのに、俺様の同級生のT男は我が家に自分の車を置いていった。

そして今、T男と俺様と運転していたもうひとりのお友達が我が家に到着。

私が外に出ると、運転手のお友達はT男と俺様をおろして帰ってしまったようで、酔っぱらったT男がひとり車庫に立っていた。

「久しぶりだね~」

T男とは私も長い付き合いで、波長は合う。

ゴルフにも海外にも一緒に遊びに行った仲だ。

お互いに太っただのと言って笑いながら、今日のメンバーにT男の元カノがいたという話になった。

「元カノ」・・

途端に興ざめした。

低レベルな会話に。

50も過ぎたおっさんとおばさんが、元カノだの元カレだのとそんな寒気がするよう単語を使うこと自体がアホらしかった。

私の中ではすでに消滅ワードだ。

そのうえ、「俺様の元カノもさ~」とT男は話を続けた。

はあ~、俺様の元カノも今日一緒だったわけ?

はじめに言っておく。

ヤキモチを焼いたわけじゃない。

これは断言できる。

数日前に私には家族で焼肉に行く金もないと言っていながら、こうやってあほらしく青春している俺様にムッときた。

それ以外の感情はない。

はいはい、君たちはいつまでも青春していてください。

呆れ果てている私に、T男が俺様のひげを指して、「コイツのひげ、どう思うよ?奥さんとしてこれ、カッコいいの?」と酒臭い息を大量にまき散らして、笑いながら聞いてきた。

自分でもわかっていた。

かなりつっけんどんな言いかたであったことは。

「え~、どうでもいい。そんなのどっちだって私には関係ないんだけど・・」

俺様が暗闇でムッとしながら「なんだよ、それ」って言ったのが聞こえた。

まもなく呼んでおいた運転代行が到着して、T男は手を振って帰って行った。

 

家に入った途端、怒鳴られた。

「お前なんだよ、あの態度は!!」

「え?」

「俺の友達の前でなんであんな言い方するんだよ!俺のメンツが丸つぶれじゃないか!!」

かなりいきり立っている。

あのひげの話かとすぐ察しはついたが、「何も変わったことはないと思うけど」ととぼけて言った。

「ふざけんな!!!あれが普通かよ!!!」

大声で怒鳴る。目がすわっている。

ひるまず反撃した。

「じゃあさ、言わせてもらうけど?もし言い方が悪かったんだとしたら、元カノがどうのとかって話が出たからだよ。はあ~?自由でいいねえってこっちだってふつう思うでしょ!」

「は?俺が元カノとなんて行くわけないだろ!!俺は行ってねえよ!!」

あ、いいの。正直、そんなんどっちだっていい。

元カノと行こうが、どんな付き合いをしていようが。

これっぽっちも興味ないわ。

「じゃあ、てめえはなんだ!昔T男と付き合っていたじゃないか!!」

は?どっから出た?

アホらし、アホらし、アホらし!

こんなやりとり自体がおぞましい。

「てめえは俺の友達と何人付き合ってたんだよ!!」

・・くだらん。

ひとりは確かに付き合ったことはあるって言っちゃあるが、他は何もなし。

しかも結婚前の話。

いつまで持ち出すつもり?もう30年はとうに超えている。

お前、いくつなんだよ~

あまりにあきれて言った。

「またそんな話?ばっかじゃないの?いつまでそんなくだらないこと言ってんの!」

「なに~!!」

そう言った途端、俺様はソファーを飛び越えて胸ぐらを掴み掛ってきた。

これは殴るつもりか?

殴ってほしいと思った。

殴れと顔を突き出した。

そしたらくるりと後ろを向き、リモコンスタンドをテーブルから床にたたき落とし、買ってきた梨を床に投げつけた。

「今日のお前の態度、俺は絶対許さない!絶対許さない!!」

ソファーに戻り、リビングのエアコンのリモコンをまた床に投げつける。

俺様はこうしてよく暴れる。

そして私は最近、こうした事件後を写真におさめている。

本当は暴れる姿を録画したいが、以前それをしようとしたらスマホを取り上げられ投げつけられた。

俺様がたばこを吸いに外に出て行った。

居ない間に床に散らばったものをスマホで撮った。

割れた梨を片付け、リモコンの電池を探し、あ~あとため息をついた。

慣れてはいる。でも・・

こいつはもう消えてほしいと思った。

 

心穏やかに迎え過ごすはずの終戦記念日は、こうして私の開戦日となった。