離婚日記~夫婦を続けるためには

50代女子。離婚を決めました。どんなふうになっていくのかわからないから・・その道のりを綴ってみようと思います。

俺様が折れる

「俺は誰にも迷惑をかけていない。誰も頼っちゃいない」

俺様は毎回それを言う。

そうなんだ。

俺様は人を頼らない。

何か頼まれた記憶があまりない。

人に寄り掛かるのが嫌い、すなわち頭を下げるのが嫌い。

もう少し掘り下げれば、俺様は人に頼むまでテリトリーを広げない。

通常何かを頼むということは、範囲や容量が多すぎて自分の手に負えないことがあるからで、俺様はその範囲を極力狭くしているから、他の手を借りるまでもなく処理ができる。

要するに自分のできる容量以上のものは極力やらない。

だから人には頼らない。

賢いヤツなのだ。

容量を超えても、単純な頼まれごとならOK。

例えばこれをポストに入れてきてとか、帰りに牛乳を買ってきてとか、そういった類の頼まれごとは、決して嫌な顔をせず、忘れることなくやってくれる。

頼まれてそれを引き受けると、仕事としての義務が生じる。

仕事はそつなくこなす。

でも、こうすればもっと相手が楽になるだろうとか、喜ぶだろうとか、それ以上のサービス精神はそこにはない。

義務を全うするだけで、相手の感情などはどうでもいい。

余計な欲や情は、仕事を増やすだけだから。

これは家庭だけではなく、仕事でもそう。

自分の仕事はここまでと、相手にはわからないように、でもきっちりと境界線を引くようだ。

以前、一緒に仕事をしているパートナーに言われたらしい。

「自分の仕事以外の協力はないよね」と。

俺様はひとったらしだから、なんでもやってくれそうな感が最初はある。

この人なら力を貸してくれるかも・・

ところが、「協力」という言葉に実は誰よりも反応の薄い人間だったことに、のちに気づくことになる。

そのあとも、いい人じゃん、いや信用ができないと自問自答を繰り返し、最終的にやっぱりこういうヤツだったんだとため息をつく。

20年以上もかけて。

 

世界中の俺様主義の元凶だと言ってもいいくらいの人がいた。

俺様の父親だ。

義父を頭に思い浮かべれば、俺様のすべてが理解できる。

俺様の母親は人当たりがよく、表面上はとてもいい人。

このミックスがあのひとったらしを形成した。

やさしく人当たりのよさそうなその中身は、実は完全な俺様人間。

見抜けないよ・・

 

義父は半端のない俺様主義。

この人の頭の中はかち割らなくても理解ができる。

リモコンひとつ、コップひとつ、自分で動かずに人に命令して手にする人だ。

「飯」と言えば、飯が出てくる。

「たばこ」と言えば、灰皿とたばこが出てくる。

誰の話も聞かない。

話しかけても返事もしない。

誰のことも気にしないから、容姿も気にしていない。

浮浪者のような格好をいつもしている。

そして1ミリも動かず、ベッドでテレビを見ている。

昭和だからで片付けることはできない、妖怪のような人。

そんな家庭で育てば、俺様と言う人間が出来上がるのは当たり前の話だ。

だから、以前にも書いたがもう一度書く。

結婚するときは親を見るべきだ。

娘の時にはそれを肝に銘じている。

 

以前、その義父に異常なほどの俺様精神を感じて、言葉も出なかった場面があった。

息子がまだ赤ちゃんだった頃。

何かの用事があり、私たちは俺様の実家にいた。

眠りかけた息子を立ちながら抱っこしている私と義父のふたりだけが、リビングにいた。

私の傍らに二つ折りに畳まれた大きめの長座布団があった。

そしてそのすぐ横に義父が座って、テレビを眺めている。

私は息子が眠ったので、布団で寝かせようと足で座布団を広げようとしていた。

少し手間取っていると、滅多にしゃべらない義父が言った。

「てめえでやれよな・・」

・・・え?

耳を疑った。

私は座布団を広げてと頼んでもいない。

でも私以外いないのだから、私に言ったんだろう。

「は、はい・・」

返事をするのがやっとだった。

思考回路が追いつかなかった。

この場面、普通だったら―

やってあげるねと声掛けをして布団を広げる。

めんどくさいと思いながらもしぶしぶと布団を広げる。

頼まれて広げる。

最悪、知らぬふりをする。

私の中では、こういう順番で行動の予想ができる。

でも、その中にはなかったシチュエーションだった。

頼まれたくないための予防線を張るとは・・

不可解。

今になって思う。

すべてにテリトリーを決めている親子なんだ。

お前が頼る前に言っておく。

俺に頼るな・・

 

「これだけいろんな話をしてもわかんないの?みんなお父さんに傷つけられてさびしい思いをしてるのが。お父さんが変わってくれたら、お父さんと暮らしていけるんだよ。お父さんが変わればここにみんないられるんだよ!」

娘が半分の期待で父親に答えを求めた。

俺様は―

「あ~もういい!わかった。俺が出て行けばいいんだろ?謝る気なんかねえよ!なんにも悪いことなんかしちゃいねえのに。明日出て行ってやるからそれでいいだろう!もう俺は寝るから!」

すてぜりふのように吐いて、定位置のソファーから立ち上がり、2階へと上がっていった。

ダメだこりゃ・・

3人の溜息だけが残る。

朝の3時になっていたが、3人ともお風呂に入り、ダイニングテーブルで話をしていた。

始まりはなんだったのか。

自分たちはどうしたかったのか。

わからなくなっていた。

そうしていると・・

俺様が2階から降りてきた。

3人が黙る。

「体が気持ち悪くて風呂に入る。吐き気もしてさっき吐いた」

誰も返事をしない。

すると思いがけない言葉が・・

「お父さんも少し変わってみるよ」

耳を疑った。

3人がそろって「えっ?」と発した。

「ちょっと努力してみるよ・・だから明日は出て行かない」

そう言って浴室へ向かった。

ここで何かの物語ならめでたしめでたし・・と終わるだろう。

でも我が家は―

ここで誰も喜ばない。

さてどうしようという話になる・・